新住宅ジャーナル2019年7月号に究極のカバー工法の事例が掲載されました

マンション共用部のビル用サッシを住宅用アルミ樹脂複合サッシに交換

住宅用のアルミ樹脂複合サッシを9階建ビルの共用部サッシに用いた改修工事 が完成した。同物件で採用された「究極のカバー工法」を開発した㈲アドオフィス代表の明官徹氏を取材。画期的な省エネ&コストダウン戦略の全容に迫る


(工事名称) ユニーブル大井町改修工事
(建物種別) RC造分譲住宅
(築年数)  築36年 (階数)9階建て
(世帯数)  18世帯  
(施工年月) 2017年8月30日~10月15日
(工事内容) 各居室の既存サッシ取替え 
(設計・施工)㈲アドオフィス

品川区大井町で完成累計100本設置

 

東京都品川区大井町に建つ9階建てのマンション(写真)。築36年18世帯が暮らしている。今から2年前、マンション全戸の断熱性能を向上させるため、補助金※を活用したリノベーション工事が行われた。既存サッシ(ビル用サッシ)の枠を残して利用。戸建住宅用のアルミ樹脂複合サッシ(Low-E複層ガラス入り)を使用。2液性ウレタンを使って接合する「究極のカバー工法」で設置した。累計設置本数は約100本。2年経過した今も異常はなく、断熱性能が飛躍的に向上した。

住宅用アルミ樹脂複合サッシをマンション共用部の窓に用いたケースとしては日本初となる。これはサッシ業者にとって驚きに値する。一般的なマンションの共用部に用いられているビル用サッシは、中高層ビルに必要な耐風圧などの諸性能を満たしており、住宅用のサッシとは寸法も納まりも異なっている。このビル用サッシを取り外して、カバー工法(既存サッシの枠を利用して新しいサッシを取り付ける工法)として、低層の注文住宅・分譲住宅・賃貸住宅などに広く用いられている住宅用サッシを取り付けるということは、その道のプロであれば考えられない離れワザであるが、そうした従来の常識を覆すリノベーション工事が行われたのだ。

略歴…1981年大手サッシメーカー入社。新入社員で低階層物件を担当。入社2年目より自分の物件の半分は自分で施工図を起こす。3年目に上司に掛け合って二級建築士を取得。5年目より本社に転勤、ハウスメーカーを担当。7年目に不動産大手のまちづくりに参画。商品開発・企画等を幅広く経験。ハウスメーカーの特建部門(ビル物件)4年間担当。販促部門、エントランス事業部、住宅建材本部と37年間にわたり多くを経験。35歳で一級建築士を取得、36歳で一級建築施工管理技士、宅建士、38歳でインテリアプランナー取得。37歳の時に友人を代表にして㈲アドオフィスを起業、現在に至る。


 

独自開発の新工法  「究極のカバー工法」

 

全窓交換のリノベーション工事の設計・施工を担当したのは、㈲アドオフィス一級建築士事務所代表取締役社長の明官徹氏(写真)。一級建築士、インテリアプランナー、宅建士、フィナンシャルプランナーなど、数十の資格を持ち、仲間内では〝資格デパート〟という異名をとってきた明官氏は、築年数の古いマンション向けの新工法の開発に着手。「ウレタン発砲カバー工法研究会」を設立して吹きつけウレタンの技能取得に取り組み、「究極のカバー工法」を新たに開発した。


「究極のカバー工法」では、住宅用に広く用いられているアルミ樹脂複合サッシを採用。吹きつけウレタンと木材を使って接合。独自の納まりで優れた諸性能を実現する(上図参照)。従来型のビル用サッシでは金物の接合がメインであり、既存サッシの形状に合わせて金物の形状を設定する必要があった。吹きつけウレタン工法で接合する場合は、既存サッシの形状に左右されずに納めることが可能である。耐風圧性能としては首都圏で8階~9階まで持ちこたえられる。実際に大井町のリノベーション工事によって実証された。またビル用サッシに比べると、住宅用のアルミ樹脂複合サッシは単価が下がるので、コストダウン効果も期待できる。


サッシメーカー退社後  本格的普及に取り組む

 

㈲アドオフィス一級建築士事務所代表取締役社長の明官氏は、2018年末に37年間勤めた大手サッシメーカーを退社して、㈲アドオフィスの代表に就任した。退社して新規事業をはじめた動機は、マンションの断熱改修の需要に迅速に対応できる窓の新工法を普及させるためである。

サッシメーカーでは、規模の大きなマンション共用部の窓の大規模改修についてはカバー工法の増加が今後も期待できるものの、20戸以下、あるいは1戸ごとといった小規模マンションや築年数の古いマンション向けの窓の大規模改修には、限界があると明官氏は見ている。

その原因は、ビル用サッシの納期にある。発注から1カ月という長い納期は、1戸ごとのマンションリフォームの工期1カ月以内をオーバーしてしまうので、せっかくの受注を逃してしまうケースが後を絶たない。実際にマンションの1戸ごとのリフォーム現場では、専有部のみのリフォームとし、サッシなどの共用部には一切手をつけないリフォームが依然として多い。窓の交換ができるにも関わらず、手続きの時間や手間の問題から、共用部扱いの窓には手をつけないことが半ば常識化している。こうした事情などから、戸建て住宅と比較して、分譲マンションの開口部の断熱対策がかなり遅れていることは否めない状況にある。こうした現状を打破すべく、納期1週間~10日で対応できる住“究極のカバー工法”宅用のアルミ樹脂複合サッシを「究極のカバー工法」を使って導入することで、今まで誰も実現できなかった断熱性に優れた居住空間を提供できると明官氏は考えている。

 

築年数 30 年超で優位性 健康寿命の延伸がテーマ

 

アドオフィスでは、「究極のカバー工法」を用いて、主に一戸ごとのマンションや戸建住宅でのリノベーション工事に取り組んでおり、設計、施工、営業、共用部工事のための承認手続きまで様々な業務をこなしている。

開口部の断熱改修を行っている業者から多い質問としては、「内窓がいいのか、それともカバー工法なのか」という質問である。

樹脂製内窓は、国の支援制度であるエコポイントと共に普及した工法で、室内側の窓枠に設置する。コストパフォーマンスに優れているので、築25年以内のマンションの場合、明官氏も内窓を勧めている。しかし、築30年以上の場合は、既存サッシの性能が出ていないため、総合的に性能を高められるアルミ樹脂複合サッシによるカバー工法を勧めている。

その際、課題となるのは、共用部の改修の許可である。分譲マンションのサッシは共用部分にあたる。従来のマンション管理規約では、共用部の改修に対しては、総会の議決が必要であった。昨今は国交省も標準マンション管理規約で理事長承認で区分所有者の負担で出来るようにするよう指導していることから、許可を取りやすくなっているのだが、広く理解が進んでいないため、今後の更なる普及・啓発を必要としている。

5月中旬時点で、約40世帯分、サッシで200本分の取り付けを行うなど、アドオフィスの改修事業は順調に進んでいる。その背景にあるのは、住まい手の健康寿命伸延のニーズである。アドオフィスでは分譲マンションの開口部をアルミ樹脂複合サッシで改修することで、住民の快適空間の提供、健康寿命の伸延を目指している。少子高齢化は世の中の必然であり、少しでも健康寿命を延ばしてもらい、幸せで健康な人生を送ってもらうための方策として、「究極のカバー工法」を位置づけている。

今後も引き続き、デベロッパー、設計事務所、工務店と協力して「究極のカバー工法」の普及に取り組んでいく。また、業界全体の底上げを図るための普及活動にも積極的に取り組んでいきたいという。